遺留分侵害額請求
遺留分を請求したいとお考えの方へ
1 遺留分の計算方法は弁護士によって異なる場合がある
遺留分は、相続財産の総額に、遺留分割合をかけ算することで計算することができるという話がなされることがあります。
そして、遺留分割合についても、父母のみが相続人になる場合を除けば、相続分に2分の1をかけ算することにより計算することができるという話がなされることがあります。
このような話をすると、遺留分が簡単に計算できるという印象を抱かれる方もいらっしゃるかと思いますが、実際には、遺留分の計算方法には、相互に主張が分かれる部分もあり、弁護士によって、大きく計算結果が異なってくるポイントがあります。
以下では、そのポイントを説明し、遺留分の主張にあたってどのような点に注意すれば良いかを解説いたします。
2 相続財産の評価方法は複数あり得る
遺留分額を算定するにあたっては、相続財産の総額を算定する必要があり、そのためには、まずは個々の財産の評価を行う必要があります。
この財産の評価方法によって、金額が変わってくる場合があります。
特に、不動産については、どのように評価を行うかが問題になります。
固定資産評価額をもって不動産の評価額とすることもありますが、個別の事情によっては、固定資産評価額を用いることが妥当ではない場合もあります。
例えば、第三者に賃貸している不動産は、同じ固定資産評価額の不動産であっても、往々にして、まったく異なる賃料が設定されています。
このような場合、賃料が高い不動産は、賃料が低い不動産よりも、高い評価額とすべきです。
このように、第三者に賃貸している不動産については、賃料の額を反映して、不動産の評価を行うべき場合があります。
3 贈与の存在を主張することによって遺留分額が変動する
相続人に対する贈与がなされている場合には、遺留分額が変動する可能性があります。
遺留分侵害額請求の主張を行う側(遺留分権利者)に対して贈与がなされている場合には、遺留分額が減額されることとなります。
注意しなければならないのは、この場合は、何年前になされた贈与であっても、遺留分額が減額されると考えられているということです。
遺留分侵害額請求の主張を受けている側(遺留分義務者)に対して贈与がなされている場合には、基本的には、相続開始前10年間になされた贈与に限り、遺留分額を増額する方向で考慮がされることとなります。
見逃しがちなのが、遺留分権利者でも遺留分義務者でもない相続人、つまり、遺留分の争いの当事者ではない相続人に対してなされた贈与です。
この場合も、基本的には、相続開始前10年間になされた贈与については、遺留分額を増額する方向で考慮がされます。
このように、相続人に対してなされて贈与の有無をきちんと確認し、これを証明する資料を得られるかどうかによって、遺留分額は大きく変わってくる可能性があります。