相続手続きを弁護士に依頼するメリット
1 必要書類を作成してもらえる
相続手続では、相続人の側で書類を準備しなければならないことがあります。
たとえば、相続人が複数である場合には、誰がどの相続財産を引き継ぐかを確定するためには、遺産分割協議書を作成する必要があります。
預貯金については、遺産分割協議書を作成しなくても手続を進めることができることが多いですが、不動産については、遺産分割協議書を作成しなければ、手続を進めることができません。
また、後日、誰がどの財産を取得したかについての争いが生じることを避けるためにも、遺産分割協議書を作成しておいた方が望ましいです。
遺産分割協議書については、財産をきちんと特定して正確に記載する必要があり、わずかな誤記でもあると、財産の対応関係が分からず、手続がやり直しになってしまうことがあります。
他には、相続財産の中に不動産があり、不動産の相続登記(被相続人から相続人への名義変更)を行わなければならない場合があります。
このような場合には、法務局に登記申請書を提出する必要があります。
登記申請書については、法務局で準備してもらえるものではなく、相続人の側で準備しなければなりません。
そして、登記申請書については、記載についての細かいルールがあり、1字が違っていただけでも登記申請が受理されないことがありますので、ルールに基づいて正確に作成する必要があります。
こうした書類について、正確なものを個人で準備することは、想像以上に大変だと思います。
インターネットで検索したり、書籍を参照したりすると、書式を入手することもできますが、逆に書式が大量に存在し過ぎて、ご自身の案件ではどの書式を用いるのが適切であるかを選別するのが大変ですし、書式の記載を正確に変更して用いることも大変です。
弁護士に相続手続を依頼すると、こうした必要書類を正確に作成することを代行してもらえます。
2 金融機関、証券会社、法務局とのやり取りを代行してもらえる
必要書類を準備できると、次は、金融機関、証券会社、法務局とやり取りして、手続を進めることとなります。
ただ、金融機関等の担当者とスムーズにやり取りするためには、ある程度の知識が必要だと思います。
たとえば、金融機関等の担当者とやり取りすると、「お父さんの出生から婚姻までの戸籍が足りないので、追加で取得してほしい。」、「遺産分割協議書の預金の記載について、口座番号の誤記があるため、訂正してほしい。遺産分割協議書を作成し直すか、相続人全員の捨印をもらって修正してほしい。」、「Aさんの印鑑証明の期限が切れているため、新しいものを取得してほしい。」といった、様々な案内がなされます。
こうした案内を正確に記録し、実行に移すことは大変です。
また、金融機関等の担当者が、手続に不慣れであり、案内の内容が不明確であることがあります。
このような場合には、こちらの方から、こういうことをすれば良いのですよねという話をし、案内の内容を誘導する必要があったりします。
このため、相続手続は、ある程度慣れた人がしないと、混乱が生じかねないです。
こうした事情から、相続手続は、スムーズに進まないと、何度も金融機関等の担当者とやり取りし、必要書類を取得し直したり、金融機関等を来所したりしなければならなくなり、大変であるという話になります。
こうしたやり取りについては、第三者に丸ごと委託することができればと思われる方も多いです。
弁護士であれば、委任状をいただければ、こうしたやり取りを包括的にお受けすることができます。
この点も、弁護士に相続手続を依頼するメリットになります。
3 紛争になった場合に対処してもらえる
相続手続がスムーズに進めば問題ないですが、その過程で相続人間で紛争が発生してしまい、相続手続が進まなくなってしまうことがあります。
たとえば、誰がどの財産を取得するかについて、意見対立が生じてしまい、相続手続が進まなくなることがあります。
このような場合に、紛争に対処することができる専門家は、弁護士に限られています。
このため、弁護士以外の専門家に依頼した場合には、紛争が発生してしまうと、「今後、この案件には関わることはできない。弁護士に相談してほしい。」という話になる可能性があります。
他方、弁護士に依頼した場合は、相続手続を行う過程で紛争が生じたとしても、引き続き、問題の対処にあたることができます。
この点は、他の専門家にはない、弁護士に依頼した場合のみのメリットであると言うことができます。
相続案件に強い弁護士の選び方 相続における預貯金の名義変更と注意点